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公的な指標としてのマンション公示、キャップレート公示

公的土地評価制度には、地価公示、地価調査、相続税路線価、固定資産税評価の4指標がある。これら4指標はそれぞれ一般の土地取引、不動産業者の価格査定、金融機関の担保評価、行政の用地買収等に利用されている。但し、求める価格は土地の㎡単価である。

 

不動産の取引が活発な都心部では、取引事例が豊富であり、ある程度地価相場も形成されているため、公的な指標に頼らなくても土地を査定することは可能である。課税目的にも用いられる公的評価の変動率は、マーケットの変動率に比べて穏やかになる傾向があり、地価高騰期にはマーケットの水準に比べて低くなる傾向にある。

 

不動産の取引が少ない地方圏では、市場で価格水準が形成されていないことが多く、このような地域では公的指標をメルクマールとして価格形成されることがおおく、「路線価と同水準」とか「固定の何倍」といった水準で取引され、公的指標が売買価格の重要な要素となっている。

 

戸建住宅の査定であれば、上記の公的土地評価を参考に大まかな価格水準を把握することができる。建物価格については、国税庁のHPで法定耐用年数を参考に、請負価額を定額法で減価修正することで概算できる。建物評価については「自力で建物を査定する」参照。

 

(土地の面積×土地の単価)+(建物面積×建物単価×現価率)=戸建住宅の査定額

 

都心部や駅至近に多い、マンション専有部分についてはどうか。

 

専有部分+共有部分の共有持分+土地の敷地利用権=マンション1室の価格

 

また、階層(低層階or高層階)、開口部(日本では南開口の評価が高い)、位置(中、角)、設備の状況(オートロック、配達ボックス)等、マンション特有の価格形成要因があり、戸建住宅のように単なる積算では査定をすることができない。単身者向け等の投資用については収益還元法を適用する必要もある。「中古マンションの査定」参照

 

平成 30 年住宅・土地統計調査(総務省)によると、昭和60年の一般住宅は2331万戸、共同住宅は1141万戸、平成30年時点では一般住宅2876万個(+23%)、共同住宅2335万戸(+105%)の上昇となっており、共同住宅の比率は一般住宅と同水準まで上昇している。

 

マンションの価格形成は戸建住宅とことなるため、公的土地評価だけでは価格を求めることができない。一般の需要者が価格水準を把握するには、同じ棟内の販売価格や不動産業者の情報などに頼ることになる。住戸におけるマンションの割合は年々上昇傾向にあり、その傾向は地価の高い都心部ほど強くなる。マンションの専有部分においても、公的土地評価のような安心して参考にできる指標が必要である。

 

マンションの指標と同様に、キャップレート(利回り)の公的指標もあると便利である。

 

REITの組成物件であれば、運用会社のHPから鑑定評価や購入時の利回りを参照することができる。REITに組み込まれるような物件は一般的に大規模、好立地、A・Sクラス等であるため、地域の利回り水準の下限値を求める際には参考になりそうである。

 

しかし、公的評価のようにどのエリアにもまんべんなく物件があるわけではないし、一般の需要者が運用会社のIR情報の中から組成物件のキャップレートを抽出する作業は簡単ではない。少なくとも、駅前や地域の代表的な商業地に、エリアの下限を示す公的な指標としてのキャップレートがあるとよい。地域の下限値としてのキャップテートの参考数値があれば、あとは物件の属性毎にリスクプレミアムを加算することで、おおまかな利回りの水準を把握することができるからだ。