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土壌汚染の調査

 

〇汚染物質にはどのようなものがあるか

 

①土壌汚染対策法第2条第1項

この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒ひ素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

特定有害物質は土壌汚染対策法施行令第一条に記載されている26品目のこと。

 

(特定有害物質)

第一条 土壌汚染対策法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。

一 カドミウム及びその化合物

二 六価クロム化合物

三 クロロエチレン(別名塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)

四 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―一・三・五―トリアジン(別名シマジン又はCAT)

五 シアン化合物

六 N・N―ジエチルチオカルバミン酸S―四―クロロベンジル(別名チオベンカルブ又はベンチオカーブ)

七 四塩化炭素

八 一・二―ジクロロエタン

九 一・一―ジクロロエチレン(別名塩化ビニリデン)

十 一・二―ジクロロエチレン

十一 一・三―ジクロロプロペン(別名D―D)

十二 ジクロロメタン(別名塩化メチレン)

十三 水銀及びその化合物

十四 セレン及びその化合物

十五 テトラクロロエチレン

十六 テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム又はチラム)

十七 一・一・一―トリクロロエタン

十八 一・一・二―トリクロロエタン

十九 トリクロロエチレン

二十 鉛及びその化合物

二十一 砒ひ素及びその化合物

二十二 ふっ素及びその化合物

二十三 ベンゼン

二十四 ほう素及びその化合物

二十五 ポリ塩化ビフェニル(別名PCB)

二十六 有機りん化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)

②ダイオキシン類対策特別措置法

第二条 この法律において「ダイオキシン類」とは、次に掲げるものをいう。

一 ポリ塩化ジベンゾフラン

二 ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン

三 コプラナーポリ塩化ビフェニル

③各自治体の条例で規定(東京都であれば「環境確保条例」)

対象不動産が環境確保条例の工場等、水質汚濁防止法及び下水道法上の特定施設等に該当する場合、上記26品目利用の可能性を調査する。

〇売買や査定時にどのような調査をするのか

 

専門的な機関でない限り、実際には土壌汚染の有無を確認することができないケースが大半です。あくまでも土壌汚染の可能性を探ることしかできませんが、独自に調査する必要があります。その上で、土壌汚染の可能性が高いとなれば、専門的な機関に調査を依頼することになります。

調査①:土壌汚染対策法の調査

 

対象地が土壌汚染対策法上の「要措置区域」及び「形質変更時要届出区域」には指定されているか否かを確認します。

 

(要措置区域の指定等)

第六条 都道府県知事は、土地が次の各号のいずれにも該当すると認める場合には、当該土地の区域を、その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため当該汚染の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下「汚染の除去等の措置」という。)を講ずることが必要な区域として指定するものとする。

 

要措置区域内であれば土壌汚染ありです。

(形質変更時要届出区域の指定等)

第十一条 都道府県知事は、土地が第六条第一項第一号に該当し、同項第二号に該当しないと認める場合には、当該土地の区域を、その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該土地の形質の変更をしようとするときの届出をしなければならない区域として指定するものとする。

 

形質変更時要届出区域であれば土壌汚染ありです。

 

 

要措置区域内は人の健康被害が生じるおそれがあるため、制限が厳しくなっています。

調査② 各自治体の条例等の調査(以下は東京都の例)

 

役所の担当窓口、自治体によっては役所のHPで対象不動産が環境確保条例の工場等、水質汚濁防止法及び下水道法上の特定施設等としてリストに掲載されているかを確認します。掲載されているイコール汚染されているにはなりませんが、掲載されている場合は汚染の可能性を否定できないため、所有者等にどのような工場なのか、どのような薬品を利用していたのか、その保管状況等をヒアリングします。

調査③ 土地、建物の閉鎖登記簿を確認する

 

現状は工場やクリーニング店などでない場合でも、従前にあった建物が工場等の可能性もあります。土壌汚染リスクの認識が深まったのは平成15年に土壌汚染対策法が施行されたあたりですので、汚染が放置されている可能性もあります。

調査④ 土地、建物の過去地図、航空写真を確認する

 

上記調査③同様に、従前に土壌汚染されるような利用があったのかを、過去地図からサンプリング調査します。国会図書館に行けば、最も古い地図の縦覧、コピーができます。航空写真等については「自力で家の地歴調査をする」が参考になります。

調査⑤ 対象地周辺の調査をする

 

対象地において有害物質利用の端緒が認められない場合でも、周辺の施設からもらい汚染の可能性もあります。以前は工業地域であったような地域であればその可能性は高くなるので、周辺の土地も含めて上記の①~④の調査が必要になります。

調査⑥ 自然由来の土壌汚染

 

海成堆積物等により土壌汚染(重金属類)されているケースもあります。このケースでは汚染の範囲が広域的になりますので、対象地が自然由来特定区域に指定されているか、役所の担当窓口でヒアリングします。

 

 

土壌汚染のある土地をないものとして売却した場合、瑕疵担保責任を問われるリスクもあるので注意しましょう。