· 

不動産の現地調査はどのようにするのか

〇現地調査の基礎

 

 ・どんな職業で必要なのか

 

行政調査と同様で、不動産業、建設業、金融機関、不動産調査会社、不動産鑑定会社などに勤務し、不動産を扱う場合の必須業務の一つに現地調査があります。まずは物をみることが最優先です。数多くの物件をみることで価値判断の基軸が形成されます。

 

 

・なぜ必要なのか

 

物件の現状を確認するために必要となります。最近ではGoogleストリートビューやGoogleマップなどで、現地に行かなくてもある程度は確認できるようになりました。しかし、最新の状況や詳細は現地に行かないと把握できません。

 

 

・現地調査の基本的な流れ

 

事前準備 → 現地調査 → 行政調査

 

※行政調査の前に現地調査が必要になります。役所の担当窓口で現地の様子を説明するために必要です。

 

 

・現地調査の持参物

 

 住宅地図、公図、建物図面、測量図、謄本、筆記用具、メモ帳、メジャーやレーザー計測器、カメラ

会社によっては現地調査用のシートがある場合もあります。

このようなシートを準備することで調査漏れを防ぐことができます。

ない場合は下図を印刷してご利用下さい。

 

〇調査内容

(建物の種類や地域に応じて調査する内容が若干異なりますが、一般的な住宅を想定しています。)

  

・表札

 

謄本の所有者と同じかを確認します。但し、第三者に賃貸している可能性もありますので事前に確認しましょう。

 

 

・道路の幅員

 

交通状況は幅に応じて計測の仕方が異なります。交通量が多かったり、幅員がひろすぎて現地での計測が難しい場合もあります。

計測の手段としては歩測、メジャー、ロードカウンターなどがあります。現地の状況に応じて使い分けをしましょう。

 

 

・セットバック

 

接面している道路の幅員が4m未満のケースでは、建築基準法状の扱いが42条2項(以下2項道路)のケースがあります。2項道路に接面している土地は、一般的に道路の中心から2mまで後退する必要があります。

同じ接面道路沿いに、最近新築された建物があれば、どの程度セットバックが必要なのかの参考になるので、行政調査の段階で、参考資料として建築確認概要書を取得します。

対象地の反対側が鉄道や河川のケースでは片側一方後退になる可能性が高いので、行政調査で確認する必要があります。

セットバック部分はみなし道路扱いになるため、建物を建築する際の敷地面積には算入できません。

 

 

・水路

 

対象地と道路との間に水路が介在しているかを確認します。側溝蓋がある場合や蓋がされていなければ確認は容易ですが、道路と同様舗装されていて現地で確認できないケースもあります。

水路がある場合は、水路部分も含んで道路認定されているかを行政調査で確認する必要があります。道路認定されていない場合は、対象地が道路と直接接道していない可能性が高くなります。

直接接道していない場合は、建物の建築ができなくなるため、水路上に橋などを設置して占用許可を取得し、接道要件を満たす必要があります。

セットバックの調査同様、同じ接面道路沿いに橋などを設置している新築された建物がないかを確認します。

 

 

・間口・奥行

 

道路の計測と基本的には同じですが、間口の簡易的な計測方法として、縁石や側溝蓋がある場合は、一辺の長さを計測して、個数を乗じることでも求めることができます。

奥行についても、境界にブロック塀などがある場合は、同様にブロック一辺の長さを計測することで求めることができます。

 

 

・高低差

 

接面道路との高低差、隣接地との高低差を調べます。道路より低い位置にある場合は、水はけの問題や建物からの眺望、プライバシーの観点からややマイナスポイントになります。

逆に高い場合は建物からの眺望やよくなりますが、階段の設置や駐車場の乗り入れの問題もあります。高低差がある場合は新築の際、造成工事が必要になるケースもあるため、建築コストが高くなる可能性があります。

 

 

・境界

 

地積測量図や現況測量図などがある場合は、図面に記載されている杭や鋲があるかを確認します。古い図面になると、杭や鋲が埋もれていたり、抜かれている可能性もあります。

また、境界には民民と官民があります。民民は私有地と私有地の境を決めたもので、官民は主に道路との境を決めたものです。

境界確定が未済のケースもありますので、杭や鋲が必ずあるわけではありません。

 

 

・越境

 

対象不動産が越境しているのか、または越境されているのかを確認します。

よくあるのは、室外機、雨樋の一部、庇の一部、植栽などが越境しているケースです。稀に躯体の一部が越境している可能性もあるので、境界の確認とセットで確認するようにしましょう。

越境は重要事項の記載事項になります。契約の際は必要に応じて覚書を交わし、将来の建替時などに越境部分を解消するようにしましょう。

 

 

・法地

 

擁壁や法地がある場合、有効的に利用できる敷地部分が少なくなります。建築の際は造成費用が発生する可能性があります。

 

 

・高圧線

 

現地調査は地上だけでなく空も見上げるようにしましょう。周辺に送電用の鉄塔があり、電線が上空を通過しているかを確認します。電線が通過している場合は、その真下の土地は高圧線下地といいます。

高圧線下地は建築の制限や騒音、心理的な嫌悪感から土地の価格にマイナスの影響を及ぼします。高圧線下地になっている場合、電力会社との間で地役権を設定している可能性が高いので、謄本の乙区を確認しましょう。

また、高圧線下地でない場合でも、近隣に鉄塔がある場合は、やはり心理的な嫌悪感から地価に影響を及ぼします。

 

 

・ライフライン

 

水道の給水、下水道のマス、ガスの引き込み、プロパンの有無などを確認します。

 

 

・増改築

 

建物図面の形状と現状の建物を目視で比較することで、増改築の有無を推定できます、建物図面の形状と一致していれば問題ないと推定できます。

 

 

・土壌汚染

 

有害物質を使用している工場やクリーニング店などの場合、土壌が汚染されている可能性があります。

また、現状の利用状況だけでなく、過去にどのような建物が建っていたのかを確認する必要があります。図書館で過去地図を確認する必要があります。

 

 

・地下埋設物

 

現地での確認は難しいかもしれませんが、ヒアリングや過去地図などから地下埋設物の可能性を確認します。

 

 

・写真撮影

 

近景、遠景、周辺環境、境界、越境などを撮影します。

 

 

・嫌悪施設

 

主観の問題もあり、具体的に定義されているものではありませんが、近隣にあったら購入をためらうような施設が該当します。

例示的には騒音や異臭のある工場、墓地、火葬場、葬儀場、線路、高架、基地、刑務所、ゴミ置場、鉄塔などがあります。

 

 

・利便施設

 

嫌悪施設同様主観の問題もあり、具体的に定義されているものではありませんが、近隣にあったら購入に前向きになるような施設が該当します。

例示的には公園、図書館、スーパー、コンビニエンスストア、交番、学校等の教育施設、保育園等の福祉施設、駅、バス停などの交通機関などがあります。

 

 

・ヒアリング

 

地元精通者への聞き込みをします。ヒアリング内容としては地価相場、居住環境、事件、人気の程度、需給環境、購入者の属性などです。

地元精通者としては、地元不動産業者、役所などが一般的です。

 

〇調査のポイント

 

 ・チェックシートの持参

 

調査漏れを防止します。(下図参照)

 

 

・再調査

 

一度現地調査をしても、再度疑念が生じた場合は必ず再調査をしましょう。

 

 

・現場主義

 

現地調査は数やってなんぼです。数をこなすことで目が肥えてきますので、現場での知識習得を心掛けましょう。

 

 

・作業服

 

背広や私服でウロチョロしたり、撮影していると変な勘繰りをされるかもしれません。

 

現地調査シート

※下記のシートをコピーしてエクセルファイルに張り付けてご利用ください。

調査日:     年    月    日 (  ) 担当者:
住居表示:                     地番:

地目:      登記地目:      固定資産税課税地目:      現況地目:      

表札: 謄本と 一致 ・ 不一致 (                )
利用状況: 謄本と 一致 ・ 不一致 (                )
画地条件:

中間画地 ・ 角地 ・ 二方路地 ・ 三方路地 ・ 四方路地 ・ 無道路地

道路幅員:

側(メジャー ・ レーザー ・ ロードカウンター)   m

側(メジャー ・ レーザー ・ ロードカウンター)   m

側(メジャー ・ レーザー ・ ロードカウンター)   m

セットバック: 済 ・ 未済 ・ 不要
無道路地の状況: 囲繞地 ・ 水路介在 ・ 間口2m未満 ・ その他(                          )
間口距離:

メジャー ・ レーザー ・ ロードカウンター ・ (            )=           m

側溝等         個 ×          m =          m

公図:          m  地積測量図:       m  建築確認概要書:           m

奥行距離:

メジャー ・ レーザー ・ ロードカウンター ・ (            )=          m

ブロック等         個 ×        m =         m

公図:          m  地積測量図:        m  建築確認概要書:           m

敷地内高低差: 有 ・ 無     m
道路との高低差:

側     m 対象地が 高い ・ 低い

側     m 対象地が 高い ・ 低い

側     m 対象地が 高い ・ 低い

隣地との高低差

側     m 対象地が 高い ・ 低い

側     m 対象地が 高い ・ 低い

側     m 対象地が 高い ・ 低い

民民境界:  
官民境界:  
越境: 有 (                          ) ・ 無
法地: 有 (                          ) ・ 無
高圧線: 有 (                          ) ・ 無
上水道: 有 (                          ) ・ 無
下水道: 有 (                          ) ・ 無
ガス: 有 (                          ) ・ 無 (プロパン)
土壌汚染: 有 (                          ) ・ 無
地下埋設物: 有 (                          ) ・ 無
嫌悪施設: 有 (                          ) ・ 無
利便施設: 有 (                          ) ・ 無
写真撮影: 近景 ・ 遠景 ・ 周辺 ・ 境界
ヒアリング:  
その他: